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線形代数をわかりやすく(5) 線形独立・基底・張る空間

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はじめに

本記事は線形空間論の勉強をしたまとめです。 私の理解が誤っている可能性がありますので、その際は優しく指摘していただけると嬉しいです。

線形独立・線形従属

前回、 \mathbb{R}^nの公理化によってベクトルというものを再定義した。

さて、いくつかのベクトルの組の関係性を表す言葉として「線形独立・線形従属」というものがあった(参照)。 これらを前回定義した線形空間 Vでも同じように定義しよう。

定義

 v_1, \cdots, v_m \in Vの線形結合が 0 \in V \forall v \in V, v + 0 = 0 + v = vとなるベクトル)となる、すなわち

 \displaystyle
c_{1} v_{1} + c_{2} v_{2} + \cdots + c_{m} v_{m} = 0

となるような実数の組 c_1, \cdots, c_m

  •  (c_1, \cdots, c_m) = (0, \cdots, 0)以外にあり得ないとき、 v_1, \cdots, v_m線形独立であるという
  • そうでないとき、 v_1, \cdots, v_m線形従属であるという

(例1)  V 2 \times 2実数行列全体とすると、

 \displaystyle
E_1 = \begin{pmatrix}
1&0\\
0&0
\end{pmatrix}, 
E_2 = \begin{pmatrix}
0&1\\
0&0
\end{pmatrix}, 
E_3 = \begin{pmatrix}
0&0\\
1&0
\end{pmatrix}, 
E_4 = \begin{pmatrix}
0&0\\
0&1
\end{pmatrix}

は線形独立。

(例2)  Vを実関数全体とすると、

 \displaystyle
f_1: x \mapsto x, 
f_2: x \mapsto x^2, 
f_3: x \mapsto x^3,

は線形独立。*1

(例3)  Vを実関数全体とすると、

 \displaystyle
f_1: x \mapsto x, 
f_2: x \mapsto x^2, 
f_3: x \mapsto x^2 + 3 x,

は線形従属( f_3 = 3 f_1 + f_2で表せる)。

基底・張る空間

同様に、「基底」と「張る空間」も再定義しよう。

基底

定義

ベクトルの組 v_1, v_2, \cdots, v_m \in Vが以下2つの性質を両方満たすとき、ベクトルの組 v_1, v_2, \cdots, v_m V基底という。

  1. 任意のベクトル v \in V v_1, v_2, \cdots, v_mの線形結合で表せる。
 \displaystyle
\forall v \in \mathbb{R}^n, \exists c_1, c_2, \cdots, c_m \in \mathbb{R} \hspace{4mm} \mathrm{s.t.} \hspace{4mm}
c_{1} v_{1} + c_{2} v_{2} + \cdots + c_{m} v_{m} = v
  1. 線形独立である。

張る空間

定義

ベクトルの組 v_1, v_2, \cdots, v_m \in Vの線形結合全体を v_1, v_2, \cdots, v_m \in V張る空間といい、 \langle v_1, v_2, \cdots, v_m \rangleで表す。

 \displaystyle
 \langle v_1, v_2, \cdots, v_m \rangle = \{ c_{1} v_{1} + c_{2} v_{2} + \cdots + c_{m} v_{m} | c_1, c_2, \cdots, c_m \in \mathbb{R} \}

基底の例

テイラー展開フーリエ級数展開

テイラー展開フーリエ級数展開は多くの実関数*2多項式三角関数の和の形で表現できますよ、というもの。

これはまさしく実関数をある基底の線形結合で表現しているに他ならない。

テイラー展開の場合、基底は 1, x, x^ 2, x^ 3, \cdotsフーリエ級数展開の場合、基底は \sin x, \cos x, \sin 2x, \cos 2x, \sin 3x, \cos 3x, \cdotsとなるわけだ。

次元

最後に次元を再定義する。

定義

線形空間 Vの次元 \mathrm{dim} Vとは、 Vの基底をなすベクトルの数である。

さきほどのテイラー展開の例で言うならば、基底の数は \inftyにあるので \mathrm{dim} V = \inftyになる。

つまるところ色々なものを座標表現できるということ

基底というのはつまり軸のことだ。  \mathbb{R}^3に対して x軸、 y軸、 z軸を取ったように、複素数空間に対して実数部の軸と虚数部の軸を取ったり(いわゆる複素平面)、関数空間に対して 1軸、 x軸、 x^ 2軸、 x^ 3軸、・・・と取ったりできるのだ。

そうしてみると色々なものの見え方が変わってくる。 関数どうしが近いか遠いかというのも、 1軸、 x軸、 x^ 2軸、 x^ 3軸、・・・と取った時の座標が近いか遠いか、なんて考え方もできそうな気がしてくる。

ああ、なんだか真理に一歩近づいたみたいでワクワクしてくる。

参考文献

線形空間論入門

線形空間論入門

Amazon

*1: f: x \mapsto yという書き方は「 f f(x)=yとなるような関数ですよ」という意味。数学では一般に使われるので知らなかった人は覚えておくといい

*2:テイラー展開は無限階微分可能な関数、フーリエ級数展開だと周期関数限定だったりする