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線形代数をわかりやすく(2) ベクトル

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はじめに

本記事は線形空間論の勉強をしたまとめです。 私の理解が誤っている可能性がありますので、その際は優しく指摘していただけると嬉しいです。

ベクトルとは

「ああベクトルね。知ってるよ。矢印でしょ?」となる人がほとんどだろうか。 「いやいや知っているぞ。『向きと大きさを持つ量』のことだ!」と言ってくれる人は多分数学や物理が好きなんだと思う。

まあ、実際ベクトルは矢印だし「向きと大きさを持つ量」で間違いないんだけど、今回は敢えてもっと雑に定義しよう。


定義

ベクトルとは、「数がいくつか並んだもの」である。


この「いくつか」というのが2つとか3つとかの時に、いわゆる高校で習ったベクトルになるかんじ。 一般には「いくつか」が nのときに n次元ベクトルという。

また、数が実数なら実数ベクトル、整数なら整数ベクトル、複素数なら複素数ベクトルとか呼ぶ。 以降は実数ベクトルについて考える。 n次元実数ベクトル全体を記号で \mathbb{R}^nで表す。

向きとか大きさというのは、ベクトルを2次元空間とか3次元空間とかに矢印の形で可視化したときに、その矢印の向いてる方向とか矢印の長さを表してる。

注意点は、「並んだ」なので、「並び順」が変わったら別のベクトルになるよ、ということ。 1個目の数を第1成分、2個目を第2成分、なんて呼んだりする。記号だと、ベクトル vの第 i成分を v_iと表す。

大切なことは、ベクトルとは何かを数値的に表現するためのものであるということ。 たとえば、「音」を数値的に表現したい場合は、周波数やら振幅の値を並べてベクトルにすればいい。 あるいは「色」を数値的に表現したいなら、赤・青・緑が混ざっている割合を並べてベクトルにすればいい。

そう考えると、ベクトルが世の中にあるものを数学で扱えるようにするための超便利グッズに見えてこないだろうか。

もしあなたが「高校数学まではばっちりよ!」と言うならば、なぜ敢えてこういう定義にしたかということも伝えたい。 それは、ベクトルの概念を広げるときに入りやすいかなと思ったから。
数が並んでいればOKなんだから、行列とか数列もベクトルと呼んでもよさそうじゃないかね? あるいは、関数もある意味で数が(無限に小さい間隔で)並んでるものだから、これもベクトルと呼べそうじゃない?

ベクトルの和とスカラ倍

ベクトルという単純に数を並べたものに対して、「和」と「スカラ倍」という概念を取り入れると、より便利になる。

「和」とは二つを混ぜ合わせる操作のこと。音を混ぜたり、色を混ぜたり。

一方「スカラ倍」とはそれ自体を大きくしたり小さくしたりする操作のこと。音を大きくしたり、色を濃くしたり。

 n次元ベクトルが2つあったとする。これらを u, vとする。 この2つのベクトルの u + vというのを考える。 高校まで(大学でもか)で習ったのは、 w = u + vとしたときに w_i = u_i + v_iとなるようにしたやつ。

いいね。

敢えてここで発展した考え方を言うと、ベクトルの和は必ずしも成分同士を足したものである必要はないということ。 大切なのは、

  1.  w = u + v n次元ベクトルにちゃんとなっていること(「閉じている」という)
  2.  u + v = v + uになっていること(「可換である」という)

成分同士を足したものというのはあくまでも「和の一種」であって、別の「和」の定義の仕方もありえるんだよ、というのを心に留めておくと、今後数学を勉強していくときに役に立つと思う。

スカラ倍

スカラとは、ここでは実数のことを言う。  n次元ベクトル v c \in \mathbb{R}によるスカラ倍を cvと表す。

 \displaystyle
(cv)_i = c v_i

(「 cvの第 i成分は vの第 i成分の c倍」という意味。)

線形独立と線形従属

線形結合

 c_i \in \mathbb{R}, v_{i} \in \mathbb{R}^n, i=1,2,\cdots, mに対して、

 \displaystyle
c_{1} v_{1} + c_{2} v_{2} + \cdots + c_{m} v_{m}

 v_1, \cdots, v_m線形結合という。

線形独立・線形従属

 v_1, \cdots, v_mの線形結合が0ベクトル(すべての成分が0のベクトル)、すなわち

 \displaystyle
c_{1} v_{1} + c_{2} v_{2} + \cdots + c_{m} v_{m} = 0

となるような実数の組 c_1, \cdots, c_m

  •  (c_1, \cdots, c_m) = (0, \cdots, 0)以外にあり得ないとき、 v_1, \cdots, v_m線形独立であるという
  • そうでないとき、 v_1, \cdots, v_m線形従属であるという

幾何学的なイメージとしては、ベクトルが2つなら、同じ直線上に乗っからないときに線形独立と呼んで、ベクトルが3つなら、同じ平面上に乗っからないときに線形独立と呼ぶ。

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(左)線形独立 (右)線形従属
あるいは色の例で考えるなら、赤色と青色と紫色の3色に対応するベクトルたちは(紫色は赤と青を混ぜたらできるので)線形従属、赤色と青色と緑色の3色は(どの2色を取って混ぜ合わせても残りの1色は作れないので)線形独立、ということになる。

参考文献

線形空間論入門

線形空間論入門

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